脳内科医Jのブログ

実りある人生のために

【仕事】コイル塞栓後の再開通

 55F SAH case

 某日、右)ICPC動脈瘤破裂、WFNS 1。dome H=10.3mm、dome W=8.6mm、dome D=10.0mm、neck=8.0mmの動脈瘤、PcomAは近位側のネック付近から分岐。double catheter techniqueでコイル塞栓術を行いました。neck remnant、coil 18本/135cmで終了。ネック付近まで攻めてコイルを入れたため、血栓形成予防のためにASA po継続。

 day 16、mRS=0で自宅退院。

 day 34、DSA f/u。inflow zoneが若干再開通、且つ、動脈瘤遠位側から母血管内にcoil endが3-4mm程度逸脱し、拍動でそよいでいる。神経学的な問題なし、血栓形成なし。

 

 問題は2つ。

 (1)coil endの逸脱:現状で血栓形成などの問題ないため、基本的には経過観察でいいと思われる。が、今後抗血小板剤を終了するにあたっては気になる。

 (2)若干のneck recanalization:非常にわずかな再開通で、現状では再破裂のリスクは極めて低いと思われる。しかし、元々が大型動脈瘤、ワイドネックであるため、高率に再開通する瘤と思われる。なので、今は若干の再開通であっても、今後さらに再開通が進行する可能性が高い。

 それぞれ単独であれば、いったん経過観察でいいと考えるが、両方あるため再治療の選択肢を検討している。

 再治療であれば、ステントでcoil endを血管壁に圧着させる、且つステントコイルで再開通部を閉塞させる。

 

 ステント選択について、

 ①LVIS blue:再開通ハイリスクであり、コイル留置に加えて、ステントによるflow-diversion効果も期待したい。師匠のT教授の意見では、本症例では1st choiceになると。しかし、留置時、特にsiphon部までステント留置しようとすると、技術的は慣れが必要。また、次に再開通した際に、trans-cellでのMC誘導が困難である(T教授は問題ないと)。

 ②Neuroform Atlas:flow-diversion効果は全くないが、ステント留置は容易で、low-profile MCでの誘導か可能、次に再発した場合でもtrans-cellでのMC誘導が容易。ただ、近位端がsiphonで終わると、次の治療時にカテ誘導が難しくなるので、留置位置はsiphonより十分に近位のなるべくまっすぐなところで。

 ③Enterprise2:自分としては、母血管の直線化効果でflow alteration(anatomical flow diversion)を期待したいこと、Atlasよりもscaffolding効果が高いのでコイル塞栓しやすいかも、ということで、有益化と考察していた。しかし、T教授は、屈曲に対応しないこと、比較的太いMCで誘導する必要があることから、現在ではよほど血管の直線化を期待したいとき以外は、ほとんど使用しないとのこと。

 以上より、①or②を使用することになるが、まだ悩み中。

 

 コイル選択については、小さく、少ないコイルでのemboli効果を発揮するために、Target XL mini、Hydrosoftを使用する方針。

 

 SAPT by ASAであったので、CLP add-onして2週間後あたりでの治療を予定する。