破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術中、血栓性合併症を経験しました。
57F 左ICPC AN破裂 D=7*6*5mm、N=4mm。
WFNS gradeⅢ
MVR既往、pAf併存のため、元々EDXB内服中
初療時、当直医師によりオンデキサが投与された。
駆け付けた際に、SAH急性期は血栓傾向に傾いているので、オンデキサで血栓形成は問題ないかと議論しましたが、既にオンデキサは投与しており、とりあえず治療へ。
コイル塞栓術開始後、通常通り全身ヘパリン化を開始した。
が、ヘパリンを投与後も一向にACTが延長しない。
10,000Uを超えてもACTがpre値と変わらない。
カテーテルシステムは、8Fr BGC、6Fr DAC、SHOURYU HR2、MC/coil。
SHOURYUの誘導に手間取って20-30分かかったため、ここでDSAしてみると、ICA-C2で完全閉塞し、頭蓋外ICAにも多量の血栓を認めた。
ここで、やはりSAH急性期の血栓傾向+オンデキサは血栓できやすかったかと。。
破裂脳動脈瘤+ICA血栓閉塞の合併。。ひとまで破裂脳動脈瘤の止血を優先。
SHOURYUの誘導は諦めて、シンプルテクニックでコイル塞栓することに。
VER=24%でmRRC classⅡとなったため、ひとまず止血処置は終了。
ICA血栓閉塞の再開通手技へ。
ICA-C2以遠の血栓はADAPTを企図。MCAまでMC/MGWを誘導したが、AC(CELEGRIDE 71)がサイフォンから上がらないため、ADAPT断念。DSAすると、なんでかICA-C2以遠は再開通していた。MC/MGWでゴソゴソして血栓が破砕・溶解したか。ひとまずOK。
頭蓋外ICA(脳動脈瘤より近位)はSolitaire X 6mmを使ってcombined techniqueで回収手技をすると、大量の弾性軟の赤色血栓が回収できた。DSAすると、血栓閉塞はなくなって完全再開通を得た。
これで、破裂脳動脈瘤の止血、ICA血栓閉塞の再開通を完了したため、手技を終了。
オンデキサの作用機序は、
・直接作用型Xa阻害剤(APXB、RVXB、EDXB)はXaに結合してその活性を阻害する。オンデキサはXaデコイとして作用し、直接作用型Xa阻害剤(APXB、RVXB、EDXB)を捕捉して、その非結合型血中濃度を速やかに減少させ、プロトンビン活性に必要なプロトロンビナーゼ複合体中のXa活性を回復させる。ただし、オンデキサは、内在性Xaがもつ凝固活性はない。また、非結合型or結合型のオンデキサは、正常なプロトロンビナーゼ昨日を阻害しない。
・UFH、LMWH、フォンダナパリクスなどの間接作用型Ⅹa阻害薬-ATⅢ複合体に結合し、ATⅢ依存性Ⅹa阻害剤の作用を阻害するとのこと。同様の機序で、オンデキサは、ヘパリン、エノキサパリンのⅡa活性も無効化する。
2024年3月にこのことについて添付文書に追記されていたことを知った。。。
オンデキサは、直接作用型Ⅹa阻害薬(APXB、RVXB、EDXB)の作用を中和する以外にも、間接作用型Ⅹa阻害薬(UFH、LMWH)の作用も阻害するとのこと。
オンデキサの添付文書上の適応は、「直接作用型Ⅹa阻害薬(APXB、RVXB、EDXB)投与中の患者における生命を脅かす又は止血困難な出血の発現時の抗凝固作用の中和」となっている。
脳実質内出血の場合は積極的に使用することは躊躇しないが、SAHの場合は当てはまらないと思うので、安易な使用は厳に慎むべきかと思う。