脳内科医Jのブログ

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【仕事】頸動脈ステント留置術のピットフォール

 脳卒中、特に脳血管内治療をメインに仕事をしています。

 先日、超急性期脳梗塞に対する脳血栓回収療法で出会った症例で、治療中に初めて経験したイベントがあったので、書いてみます。

 ICA top閉塞と思って治療に行きました。C-CAGすると、ICA起始部のアテローム硬化で、pseudo-occlusionになっていました。で、頸部と頭蓋内のタンデム閉塞と考えました。

 まずは頸部ICAの狭窄部をフィルタープロテクションデバイスでlesion crossし、PTAを行った後、BGCをICAに誘導して頭蓋内DSAすると、頭蓋内は閉塞血管なし。

 IV-tPAで再開通したか、初めから閉塞していなかったか。

 いずれにしても、頭蓋内のinterventionはなし。

 BGCをCCAに戻してもう一度撮影すると、リコイルして、再度pseudo-occlusionに。

 なので、ここのCASを企図しました。

 再度、フィルタープロテクションデバイスでlesion crossし、PTAを行った後、オープンステントを留置しました。意図した位置にステントデプロイでき、これで終了と安堵。

 しかし、直後の確認造影で、造影剤がステント内から上がっていかない。。。ステント内でtapered occlusionしており、見た目からはICA distal閉塞か。PTAした際のプラーク飛散でフィルターの目詰まりかと考え、吸引カテで血液吸引したがデブリスは一切なし。フィルター直下まで上げている吸引カテから強めに造影してみると、フィルターをランディングしていたあたりのICAにスパスムが起こっているのが薄っすら見えました。結局、それによる血流障害でしたので、フィルタープロテクションデバイスを抜去して、再度造影すると、スパスムは解除され、頸部~頭蓋内までの血流は全く問題なく開通していました。

 これまで、頸動脈狭窄に対する血管内治療は、100例以上経験していて、フィルタープロテクションデバイスも何十例も使用していますが、それによるスパスムは初めて経験しました。フィルタープロテクションデバイスは、治療中に多少動くことも多いですが、これまではスパスムが起こったことはありませんでしたので、実際の治療中にそれは想像もしませんでしたが、当然起こりえるものなので、今回はいい教訓になりました。同僚の先生達とも、経験を共有しました。

 同じような経験した先生はいらっしゃるでしょうね。