脳内科医Jのブログ

実りある人生のために

【仕事】非典型的破裂脳動脈瘤のコイル塞栓術

季節の変わり目、気温が下がってきたとたん、急性脳卒中の患者さんが増えてきます。

この3週間、緊急カテーテル治療が6件、予定カテーテル治療が2件ありました。

出血性、虚血性いずれも増えてきました。

 

昨夜2020/11/14の症例。21時にcallあり、23時頃から治療開始。

78M、WFNS gradeⅤのSAH、インヘミに血腫形成あり。

AcomAに3個の動脈瘤、AcomAから3rd ACAあり、subcallosal AなどのAcomA穿通枝は同定できず(血腫の影響)。AcomAは3rd ACA起始部あたりに狭窄あり。

AcomAの右寄りに2個、①4mmと②3mm。左寄りに1個、③1.5mm。

形状から破裂は①と想定し、これから塞栓を企図。

 

治療経過:

・CTAでA1が右hypo、左dominatだったので、左からアプローチすることに。ただ、AcomAに狭窄あるので、それを越えないと①と②には行けない。

・ICA→ACAが急峻でMC/MGWの誘導が困難。MCA起始部にTransformをおいて、これを壁・支えにして、ACAにMC/MGWを誘導。 →今回のtips(1)

・①、②にMC/MGWが誘導困難。③はすんなりMCをengageできたので、これをとりあえず塞栓することに。これが破裂した可能性は極めて低いので、あまり意味はないが、近傍に破裂瘤があるので、つぶせればつぶすべき。MC engageしただけで動脈瘤は造影されないくらいのネックで、1.0mmコイル1本でCO。

・次の手技ではなぜか②に意外とすんなりMC/MGWが誘導できた。コイル数本でCO。

・やはり、MC/MGW誘導が一番困難なのは①。入らない。動脈瘤のprojectionが真ん前なので、母血管とドームを十分に分離したviewがとれない、他の血管と重なってドームもきっちり描出困難。左からのアプローチだと、AcomA狭窄部を通るのでMGWの操作性が悪く、微妙な操作ができない。

・右ACAからのアプローチに変更。これでAcomA狭窄部は通らなくていい。通常のworking angleはとれないので、「②のコイルマスのネック部分」「①のネック部分とその基部の母血管」が分離できる角度をなんとか探した。それで、MC/MGWを進める方向だけをみることにした。MCはpre-shape 45、MGWの先端を様々試した結果、なんとかMCをengageできた。ドームは他の血管と重なってはっきりしないので、ライブ映像でコイルの広がり、想定するネックラインを守りながら、塞栓した。おそらく破裂点と思われる部位はコイルがよく充填できた。あとはMCがkick-backしてくるまで小さいコイルで刻んで、なんとか塞栓終了。

・いつものコイル塞栓は、Target、G3を使用しているが、今回は、Target、Axium Primeを使った。G3は隙間を探して入っていってくれる柔らかいいいコイルだけど、コイルとワイヤーの接続部分が固く、コイルの最後の方になると、抵抗がでてきて、入れきれない場面をよく経験する。今回は、小さい動脈瘤でもあり、G3のそういう性質は合わないと考えたこと、Axiumを知るためにも、G3は使用しなかった。AxiumuはTargetと感触は変わらない印象だった。

 

 自分より上級医のいない環境下でのコイル塞栓のなかで、一番難しい症例だった。自分なりのストラテジーで治療を完遂できた。自信につながる症例だった。